怪我を越えた伝説の真相:古賀稔彦が遺した魂の一本背負いと哲学
現役引退後、彼が情熱を注いだのが次世代の育成だ。神奈川県川崎市に開設した町道場「古賀塾」では、単に勝つための技術を教え込むのではなく、礼節と思いやりの心を育む新しい武道教育の形を提示した。
「子どもたちにはまず、柔道を楽しむ心を知ってほしい」。厳罰主義や威圧的な指導が根強く残っていたスポーツ界において、彼は対話を重んじ、褒めて伸ばすアプローチを徹底。全日本柔道連盟の女子強化コーチとしても手腕を発揮し、アテネ五輪で谷本歩実をオール一本勝ちの金メダルへと導いた指導力は、指導者としての器の大きさを証明している。
古賀塾の道場訓に刻まれた「人を愛し、人を敬い、人に感謝する」という精神は、競技の勝敗以上に人としてどう生きるべきかという問いかけだ。彼が蒔いた種は今、世界中の指導現場で芽吹き、暴力や理不尽を排除した健全な武道環境づくりの規範として機能している。