ショスタコーヴィチ第9番の謎|スターリンを激怒させた真相と名盤
本作の二面性――表層の軽やかさと深層の冷徹な毒気――を十全に味わうための決定盤録音を3作厳選して紹介します。
1. エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団(1965年ライヴ録音)
世界初演を手掛けた盟友ムラヴィンスキーによる伝説的演奏。一切の甘さを排した鋼のようなアンサンブルと、剃刀のような切れ味を誇るリズム処理は圧巻です。第5楽章の破滅的なコーダにおける冷厳な疾走感は、作曲当時の張り詰めた空気感をそのまま伝えてくれます。
2. キリル・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団(1965年録音)
ショスタコーヴィチの交響曲全集録音の金字塔。コンドラシン特有の猛烈なドライヴ感とグロテスクなアクセントが際立ち、道化芝居の奥底に潜む狂気と悲哀をえぐるように暴き出します。オーケストラの荒々しいまでの迫力が聴き手を圧倒します。
3. アンドリス・ネルソンス指揮/ボストン交響楽団(2018年録音)
21世紀を代表するショスタコーヴィチ録音プロジェクトの一環。極めて高解像度な録音技術により、木管楽器の繊細なニュアンスやファゴットソロの微細な息遣いまでクリアに捉えられています。近代的な構築美と情感の深さが絶妙なバランスを保った現代の名盤です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
交響曲第9番は、ショスタコーヴィチの全作品の中でも特にユニークな立ち位置を占めています。鑑賞にあたっての向き・不向きは以下の通りです。
- おすすめできる人:
- ブラックユーモア、機知、洗練されたオーケストレーションを好むリスナー
- 大仰な英雄賛歌よりも、個人の内面や歴史の皮肉に触れるドラマを味わいたい人
- 木管楽器(特にピッコロやファゴット)の超絶技巧や名人芸を堪能したい人
- 慎重になるべき人:
- 第5番「革命」や第7番「レニングラード」のような、爆発的な重低音や壮大・重厚なクライマックスを期待している人
- 明快でストレートな勝利のファンファーレや、壮大な合唱付きの祝祭音楽を求めている人