菅さんの弔辞はなぜ泣けるのか?銀座の焼き鳥屋と山県有朋の歌の真意
弔辞のハイライトの一つが、2012年秋、第2次政権発足の前夜を描いたエピソードでした。菅義偉 弔辞 銀座の焼き鳥屋のシーンとして語られたこの一節は、日本の政治史を塗り替えた知られざる密談のリアルを伝えています。
当時、第1次政権を失意のうちに退陣した安倍氏は、持病の再発やバッシングの記憶から、党総裁選への再挑戦に対して慎重な姿勢を崩していませんでした。周囲の多くが様子見を決め込むなか、菅氏は安倍氏を銀座の焼き鳥屋へと誘い出します。煙が立ち込める簡素なカウンターで、二人は酒を酌み交わしながら長時間にわたり差し向かいで言葉を交わしました。
「日本には、あなたが必要です。もう一度、総理を目指すべきだ」
菅氏はこの直談判において、「もし総理が受けて立つなら、私はどのような役回りに就いてでもあなたを支える」と腹を括って説得にあたりました。挫折を知る政治家が、自らの退路を断って別の政治家に命運を託した夜。この銀座の焼き鳥屋での密談こそが、後に7年8カ月に及ぶ安定政権を生み出す起点となりました。弔辞の中でこの記憶を甦らせた菅氏は、「あのときの私の判断は、決して間違っていなかった」と結び、盟友の成し遂げた軌跡を自らの生涯の誇りとして公に宣言したのです。