江夏の21球の真相|古葉監督との確執と奇跡のスクイズ見破りを徹底解説
世間ではしばしば、「江夏は天才的な閃きと直感でスクイズを見破った」と神格化されがちです。しかし、実際のスクイズを見破った理由は、オカルト的な勘ではなく、恐ろしいまでに研ぎ澄まされた観察眼と合理的な状況分析の産物でした。
1死満塁の場面、打席には近鉄の石渡茂。この局面で、江夏は相手ベンチと打者の挙動から、明確なサインを読み取っていました。
- 西本監督の心理的プレッシャー:これまで日本シリーズに何度も進出しながら、ことごとく敗れ去ってきた西本監督の悲願。「強攻策をとって併殺打で終わるリスク」を極端に恐れ、確実に同点に持ち込める「スクイズ」の誘惑に抗えないはずだという読み。
- 打者・石渡茂の微妙な身体反応:スクイズの場面、打席の石渡は普段よりもグリップをやや長めに持ち直し、わずかに前傾姿勢をとっていました。内野手の前進守備を意識するあまり、バントを警戒されないようにしようとする不自然な静けさが漂っていたのです。
- 三塁走者のスタート:投球動作に入った瞬間、三塁走者の吹石徳一が打球の行方を確認することなくトップスピードで本塁へ向かってスタートを切ったのを、江夏は視野の端で捉えていました。
「スクイズだ!」と確信した瞬間、江夏の手はすでにリリース寸前でした。本来投げるはずだった内角への球筋を、自らの指先の力だけで咄嗟に外角高めのボールゾーンへと外したのです。このミリ単位の咄嗟の技術と、サインにないウエストボールを完璧に捕球してブロックした捕手・水沼四郎の連携によって、球史に残るスクイズ阻止劇が完結しました。