手のひらを太陽にの深層|やなせたかし極貧と絶望から生まれた命の叫び

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手書きのノートに記された素朴で力強い詩は、昭和の音楽史に燦然たる足跡を残すもう一人の巨匠の手に渡ることで、時代を駆け巡るメロディへと昇華しました。希代のヒットメーカー・いずみたく作曲による旋律の誕生です。

舞台の仕事を通じて旧知の間柄だったやなせ氏から詞を手渡されたいずみ氏は、その紙片を一読した瞬間、深い衝撃を受けたといいます。湿っぽくなりがちな「命の尊さ」というテーマを、いずみ氏はあえて躍動感のあるラテンのリズム、サンバやマーチを想起させる快活なメトロノームに乗せるアプローチを選択しました。悲哀を帯びた詩情に、底抜けに前向きなビートをかけ合わせることで、暗鬱な絶望を跳ね返すエネルギーへと反転させたのです。

世に出るプロセスにおいても、当時の放送メディアの先駆けとなった番組が重要な役割を果たしました。1962年、誕生間もない『NHKみんなのうた』の放送楽曲に採用されたことが、全国津々浦々の茶の間へ届く契機となります。歌手の宮城まり子氏による慈愛に満ちたソロ歌唱、そして重厚なハーモニーを響かせた男声コーラスグループ・ボニージャックス版のレコードリリースによって、楽曲は瞬く間に子供から大人までを熱狂させる社会現象へと発展しました。

小学校の音楽教科書にも長年掲載され、誰もが当たり前に知る唱歌となった背景には、単なる親しみやすさだけでなく、いずみたく氏の天才的なポップセンスと、やなせ氏の骨太な言霊とのケミストリーが存在していたのです。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。