スペンサーの色彩美学!劇中カラーと衣装デザインに秘められた真実
物語の冒頭から全編にわたって流れる色調は、主人公の置かれた孤立無援の状況を痛烈に物語る。サンドリンガムハウスの冷ややかに張り詰めた空気、くすんだグリーンの広大な敷地、そして格式ばった部屋の重苦しいインテリア。ダイアナ元妃の身を包む鮮烈な赤のコートやドレスは、その死角のない閉塞感に対する強烈な違和感として機能している。
特に印象的なのは、シャネルのクチュールドレスを身に纏うシークエンスだ。オフホワイトの贅沢な生地に施された繊細な刺繍は一見すると華やかだが、同時に彼女を締め付ける美しい檻のようでもある。衣装デザインを担当したジャクリーヌ・デュランは、色と素材の質感を巧みにコントロールすることで、外面の豪華さと内面の崩壊という皮肉なコントラストをスクリーン上に完璧に構築してみせた。