寺島しのぶと歌舞伎|役者になれぬ葛藤と長男・尾上眞秀が拓く新時代
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寺島しのぶが幼少期から抱え続けた最大の苦悩、それは「なぜ自分は歌舞伎役者になれないのか」という根源的な問いでした。人間国宝である父・七代目 尾上菊五郎の背中を見て育ち、誰よりも早く台詞を覚え、立ち回りを真似ていた少女時代。しかし、歌舞伎の世界には400年以上にわたり受け継がれてきた「女人禁制」という厳格な掟が存在します。
5歳年下の弟・尾上菊之助が誕生し、周囲の期待が跡継ぎである弟へと注がれる中で、彼女は自らの血筋と性別の矛盾に激しく苦しみました。「男に生まれていれば歌舞伎ができたのに」という思いは、思春期を通じて強い孤独感と反骨心へと変わっていきます。
しかし、彼女はその絶望を単なる悲劇で終わらせませんでした。蜷川幸雄演出の舞台や文学座で演技力を徹底的に磨き上げ、2003年の映画『赤目四十八瀧心中未遂』、そして2010年の『キャタピラー』でベルリン国際映画祭 最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。歌舞伎界で舞台に立てなかったエネルギーを、世界の映画界を唸らせる唯一無二の表現力へと昇華させたのです。