サカナクション『忘れられないの』コード進行の秘密と簡単ギター演奏法
ネット上の楽譜共有サービスであるU-FRET(U-フレット)やリンネのコードブック、ChordWikiなどを巡回してコードをコピーしようとすると、サイトによって記載されているコードネームが微妙に異なり、困惑するユーザーが少なくありません。これはどちらかが誤っているのではなく、「ベース音の経過音を拾っているか」それとも「上モノ(ギターやキーボード)の和音を拾っているか」という採譜視点の違いに起因する盲点です。
代表的な例が、サビの2周目に出てくるディミニッシュの表記です。ある譜面では「A#dim」と書かれ、別の譜面では「C#dim」や「G#dim7」と記されているケースが見られます。音楽理論上、ディミニッシュ・セブンス・コードは構成音(短3度ずつの積み重ね)が循環するため、構成音であるA#(B♭)、C#(D♭)、E、Gのどれをルート(最低音)とみなすかによって呼び名が変わります。サカナクションのアンサンブルでは、ベースがAmへ向かう半音下の経過音として動いているため、機能としては「A#dim」と解釈するのが最も自然ですが、鍵盤のボイシングだけを切り取ると別の転回形に見えるという構造的な背景があります。
また、イントロの印象的なフレーズについても誤解が広がっています。「イントロを完コピしないと弾き語りが成立しない」と思い込んでいる初心者も多いですが、原曲のイントロはサンプリングや複数のシンセサイザー、ギターのカッティングが何層にもレイヤーされたプロダクションの産物です。弾き語りやソロ演奏の現場においては、イントロの細かい単音パッセージに囚われるよりも、「Cmaj7 → D → G → Em」のサビと同じ基本進行をリズミカルにストロークして歌へ導入するほうが、楽曲本来のグルーヴを損なわずにスムーズな演奏を実現できます。