代表取締役と取締役の決定的違いとは?権限と責任の真相に迫る
役員というポストの華やかさの裏で、極めて深刻なトラブルに発展しやすいのが「名ばかり取締役」の存在です。法務相談や倒産現場の取材を進めると、「学生時代の起業仲間に頼まれ、名前だけ取締役として貸していた」「親族経営の会社で形式上役員に入っていたが、実務にはノータッチだった」と語る人々が、突如として億単位の請求書を突きつけられるケースが頻発しています。
会社法が定める会社法上の役員責任は極めて厳格です。会社法第423条(会社に対する損害賠償責任)および第429条(第三者に対する損害賠償責任)において、役員がその任務を怠った(任務懈怠)ときは、生じた損害を賠償する義務を負います。ここで重要な司法判断の基準となっているのが、最高裁の確立した判例です。判例では、取締役は担当業務の有無や常勤・非常勤を問わず、代表取締役をはじめとする全取締役の業務執行全般を監視する法主義的義務を負うとされています。
ある地方の製造業者で実際に起きた実務トラブルでは、代表取締役が独断で行った巨額の粉飾決算と不正融資の末に会社が経営破綻。債権者団は実務を主導した代表取締役だけでなく、「経営会議に出席すらしていなかった非常勤取締役」に対しても個人賠償を提訴しました。裁判所が下した判断は「取締役としての監視義務を著しく怠った重大な過失がある」として、個人資産の差し押さえを含む数千万円の連帯賠償命令でした。
SNSやQ&Aサイトでも「名義だけの取締役を辞任したいが創業者が手続きをしてくれない」「倒産した知人の会社の保証人にサインした覚えがないのに役員責任を問われている」といった悲痛な叫びが散見されます。取締役である以上、「知らなかった」「関与していなかった」という抗弁は法廷で通用しません。役員報酬を受け取っていようが無報酬であろうが、登記簿に名前が載っている時点で、すべての取締役は会社の全リスクに対する「見張り番」としての重責を背負わされているのです。