炭水化物を断つ人類の賭け——2026年、医療現場が問い直す「ケトン体代謝」の光と影
ヒトの身体は本来、2つの燃料タンクを持つハイブリッド車のような構造をしている。一つは即効性のある糖質由来のグリコーゲン、もう一つが長距離走を可能にする体脂肪だ。現代人の大半は、24時間いつでも手に入る糖質によって前者のタンクばかりを酷使し、後者のバルブを錆びつかせている。
ケトン食の基本設計は極めて厳格だ。1日の総摂取カロリーのうち、70〜80%を脂質、15〜20%をタンパク質、そして炭水化物はわずか5〜10%(通常50g未満、厳密には20g以下)に抑え込む。この極度の糖質枯渇に直面した肝臓は、脂肪酸を分解してアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)、アセトンという3種の化合物を合成し始める。これが「ケトーシス」と呼ばれる代謝状態だ。エネルギーの蛇口を根底からひねり直す作業と言っていい。