空の巣症候群とは?寂しさの正体とうつ病との違い・乗り越え方
空の巣症候群は「母親特有の悩み」と片付けられがちですが、それは大きな誤解です。現場の医師やカウンセラーは、父親(男性)に生じる空の巣症候群の深刻化を強く警告しています。
昭和・平成型の企業戦士として働き、家庭を妻に任せきりにしてきた父親の場合、子どもとの接点は母親ほど多くなかったかもしれません。しかし、定年退職が視野に入る50代後半から60代にかけて子どもが独立した際、「自分は何のためにあくせく働いてきたのか」という実存的危機に直面します。特に娘を溺愛していた父親が急激に口数を減らし、酒量が増えたり塞ぎ込んだりするケースは少なくありません。男性は弱音を吐くことを恥と捉える傾向が強いため、周囲に気づかれないまま重篤な孤立に陥る傾向があります。
さらに深刻なのが、子どもの巣立ちを契機とした夫婦関係の破綻と熟年離婚です。これまで子どもという「かすがい」「緩衝材」が存在したことで辛うじて維持されていた家庭において、子どもが抜けた瞬間に「見知らぬ異性とふたりきり」で取り残される現実が浮き彫りになります。
会話は業務連絡のみ、食事も別々、夫は妻が泣いている理由を理解しようとせず「大げさだ」と切り捨てる――こうしたすれ違いの蓄積が決定打となり、夫の定年退職と同時に離婚届を突きつける事態へと発展します。子どもの巣立ちは、家族の縮小であると同時に、夫婦のパートナーシップを根本から再構築できるかどうかの重大なリトマス試験紙でもあるのです。