リスニングとヒアリングの違いを暴く!ビジネスの罠と正しい英語表現
英語本来の定義が受動的な知覚であるにもかかわらず、なぜ日本のビジネス社会では「顧客から情報を収集する能動的な行為」をヒアリングと呼ぶようになったのでしょうか。その背景には、官公庁の行政用語と昭和・平成期の英語教育が辿った独特のガラパゴス進化があります。
第一の要因は、行政機関や法曹界における専門用語の転用です。英語の「hearing」には「聴覚」のほかに、「公聴会」「聴聞」「審問」という公的機関が利害関係者の意見を正式に聴取する手続きを指す法律用語の意味があります。官公庁が政策決定の前に関係各所から事情を聴く行為を「ヒアリング調査」と呼んだことが発端となり、それが民間企業のコンサルティング会社や大手広告代理店に伝播。次第に和製英語としてのヒアリングとして、一般的な商談や社内調査にまで拡大していきました。
第二の要因は、学校教育における世代間ギャップです。1979年に始まった大学共通第1次学力試験やその後の大学入試センター試験、高校入試などにおいて、長らく英語の音声試験は「ヒアリングテスト」と呼称されていました。2000年代半ばから2006年のセンター試験英語リスニング導入などを契機に「リスニング」への呼称統一が進みましたが、それ以前に義務教育を受けた40代以上の世代にとっては、「英語を聞く=ヒアリング」という感覚が刷り込まれたまま固定化した実情があります。
その結果、「ビジネスにおける情報収集はヒアリング」「英語の勉強や試験はリスニング」という、国際標準とは切り離された日本独自の棲み分けが完成したのです。