なぜ物が捨てられないのか?心理と病気の境界線と劇的に片付く脱出術
単なる生活習慣の乱れにとどまらず、精神医学的な支援が必要な領域も存在します。部屋が足の踏み場もない状態に陥っている場合、背景に捨てられない病気の可能性が隠れているケースを排除できません。
代表的な疾患が、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)にも独立した疾患として記載されている「ためこみ症(Hoarding Disorder)」です。ためこみ症の診断基準の主軸は、「実際の価値に関わらず物を手放すことに持続的な困難を感じる」「手放すことに対して著しい苦痛が伴う」「居住空間が物で埋め尽くされ、本来の用途(就寝・調理など)で機能しなくなっている」という点にあります。本人が病気だと認識していない(病識が乏しい)ケースが多いのも特徴です。
さらに、近年注目を集めているのが発達障害やADHDの特性との関連です。ADHD(注意欠如・多動症)を抱える人は、脳の前頭葉が司る「実行機能(順序立てて物事を進める、集中を維持する、ワーキングメモリで短期記憶を保持する)」に困難を抱えやすい特性があります。片付けを始めても、途中で見つけた懐かしい手紙に気を取られて作業が中断したり、物の定位置を決めても戻すことが習慣化しにくかったりします。
また、高齢期においては認知症の初期症状や、意欲低下から身の回りの世話を放棄するセルフネグレクトの兆候としてゴミの蓄積が現れることも多く、命に関わる火災や孤独死のリスクと直結しています。