副鼻腔炎の鼻うがいは逆効果?悪化する理由と痛くない正しいやり方
副鼻腔炎に悩む患者が鼻うがいを行った際、劇的に症状が好転するケースがある一方で、かえって悪化を招く事例には明確な解剖学的理由が存在します。決して「体質に合わなかった」という曖昧な問題で片付けられるものではありません。
第一の決定的な理由は、「強すぎる水圧による炎症物質の圧入」です。副鼻腔は、鼻腔(鼻の穴の奥)の周囲にある骨の空洞であり、非常に細い「自然口(しぜんこう)」と呼ばれる小さな孔で鼻腔とつながっています。副鼻腔炎を発症している粘膜は激しく腫れ上がり、自然口が塞がれている状態です。この閉塞した空間に向かって強い力で洗浄液を押し込むと、逃げ場を失った汚れた洗浄液と細菌が、中耳へとつながる耳管(じかん)へ逆流します。その結果、副鼻腔の炎症に加え、激痛を伴う「急性中耳炎」を併発する事態に陥るのです。
第二の理由は、「浸透圧ショックと繊毛(せんもう)運動の麻痺」にあります。手軽だからと水道水をそのまま鼻腔へ流し込んだり、塩分濃度が薄すぎる溶液を用いたりすると、細胞内外の浸透圧差により鼻粘膜の細胞が急激に膨張し、激しいツーンとした痛みを引き起こします。人間の鼻粘膜には、異物を絶えず喉の奥へと送り出す「繊毛」がびっしりと生えていますが、不適切な水溶液はこの繊毛活動を最大数時間にわたって完全に停止させます。自浄作用を奪われた粘膜上では細菌が増殖しやすくなり、結果として副鼻腔炎の治癒を著しく遅らせてしまいます。
さらに、洗浄後に「鼻を勢いよくかんでしまう行為」も致命傷となります。洗浄直後は鼻腔内に水滴が滞留しており、この状態で力強く鼻をかむと、空気圧とともに残存した洗浄水が耳管や副鼻腔の奥深くへと押し込まれ、炎症を拡大させる二次被害を生み出します。