新宿西口の路地裏で起きている「魚の価格破壊」──物価高の2026年、タカマル鮮魚店が皿に盛る狂気と勝算
小滝橋通りから一本入った薄暗い路地。整然と再開発が進む新宿の西口エリアにあって、この一角だけは独特の空気が澱んでいる。積み上げられた黄色いプラスチックのビールケース。濡れたアスファルト。店先に並ぶ発泡スチロールの箱には、氷に埋もれた丸のままの魚が無造作に突っ込まれている。呼び込みの声と厨房のダクトから吐き出される焼き魚の煙が混ざり合い、視覚と嗅覚を同時に叩いてくる。
店内は決して快適とは言えない。狭い通路にひしめき合う丸椅子、油と醤油の匂いが染み付いたテーブル。だが、誰も文句など言わない。正午を回ると同時に、近隣のオフィスから駆け込んできた背広組や作業着姿の男たち、さらにはスマートフォンを握りしめた旅行者でフロアは瞬く間に埋まる。紙に手書きされた日替わりメニューを睨みつけ、レジ前で迷う数秒すら惜しいと言わんばかりのスピード感で注文が飛ぶ。