夏目漱石『こころ』名言が抉る人間の業!孤独とエゴの深層心理
先生が遺書の中で静かに語る名言の一つに、近代社会の構造的欠陥を突いた独白がある。「自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならない」。漱石が透徹した視線で見抜いていたのは、封建的な共同体を脱して「個」を手に入れた人間が直面する、避けがたい孤独の宿命であった。
日本近代文学において最高峰の心理小説とされる所以は、個人の内面に潜む暗部を社会の変容と結びつけて暴き出した点にある。他者に干渉されない自由を謳歌する一方で、誰とも魂の底で繋がることができない孤立感。漱石のペンは、1世紀以上前にすでに、現代の都市生活者が抱える空虚感の正体を冷徹に予言していた。