無添加粉ミルクの真実: 安全神話と科学的根拠の狭間で
無添加という言葉には法的定義が存在しない。
これが最初の落とし穴だ。消費者庁の食品表示基準では、「無添加」表示に関する統一基準は設けられていない。各メーカーが独自の解釈で使用している現状がある。ある製品は「合成保存料無添加」を謳い、別の製品は「香料・着色料無添加」と表示する。何を添加していないのか、明確に読み解く必要がある。
東京大学大学院農学生命科学研究科の栄養学研究チームが2024年に発表した調査によれば、市販される「無添加」表示粉ミルク23製品のうち、完全に食品添加物を含まない製品は3製品のみだった。残り20製品には、栄養強化目的のビタミンやミネラル添加物が含まれていた。これらは食品添加物に分類されるが、消費者の多くは「無添加」の範疇と認識していない矛盾が浮かび上がる。
栄養強化剤という灰色地帯
ビタミンDやビタミンK、鉄分などの栄養強化剤は、法的には食品添加物に該当する。しかし母乳にも含まれる必須栄養素であり、乳児の健康維持に不可欠だ。国立成育医療研究センターの小児栄養科は、「栄養強化剤なしの粉ミルクは栄養学的に不完全であり、推奨できない」と明言している。
無添加を謳う製品の多くは、この栄養強化剤を「添加物」としてカウントしていない。消費者が想像する「化学物質ゼロ」というイメージと、実際の製品内容には隔たりがある。