母・田部井淳子の祈りを継ぐ田部井進也の現在と富士登山の真実
世間が知る田部井淳子は「不屈の女性登山家」だが、息子である進也氏が記憶する母の素顔は、温かくユーモアに満ちた生活者そのものだった。海外遠征から帰国しても特別な英雄気取りは一切なく、翌朝には家族のために手際よく朝食を作っていたという。
「一歩踏み出せば、景色は必ず変わる」。母が日常のなかでふと口にしたその言葉が、進也氏の胸に深く刻まれている。病魔に侵されながらも最期まで山への情熱を失わなかった母。その手を握り締めながら交わした約束が、現在のあらゆるプロジェクトを突き動かす原動力となっている。