なぜこの5城だけなのか?国宝の城が隠す防衛の謎と最新スクープ
現存天守12城のうち、7城が「重要文化財」にとどまり、5城だけが「国宝」に指定されている理由を明確に説明できる人は意外に少ない。この境界線を決めるのは、単なる建物の古さや外観の派手さではない。文化庁が定める国宝指定の基準には、「世界文化の見地から極めて高い価値を有し、類例のない卓越した意匠や歴史的意義を持つもの」という厳格なハードルが存在する。
転機となったのは2015年の松江城の国宝再指定だ。松江城は戦後間もない時期に国宝から重要文化財へ見直された経緯があったが、城内の柱に打ち付けられていた「慶長十六年」の年号が記された祈祷札が発見されたことで状況が一変した。築城年代が文献と実物によって科学的に完全に証明され、天守内部の「包板(つつみいた)」による独自の補強技法が建築史上唯一無二であると認められた結果、63年ぶりの国宝返り咲きを果たしたのである。
現存する五城はいずれも、戦国末期の戦闘的緊張感を残す「望楼型」あるいは完成された要塞建築である「層塔型」の極致を示す。単に古い木材が残っているだけでなく、その時代の政治・軍事情勢を構造そのもので雄弁に語る史料的価値こそが、国宝を国宝たらしめている。