『暮しの手帖』が今なお支持される理由とは?最新号や人気レシピの真価
『暮しの手帖』を語る上で欠かせないのが、昭和の生活史を塗り替えた「商品テスト」です。1954年の第26号「靴下」の摩耗テストからスタートしたこの企画は、市販のトースターを何十台も並べて数万枚の食パンを焼き続け、石油ストーブを転倒させて火災の危険性を暴くなど、文字通り製品を破壊し尽くす実証実験でした。スポンサーのいない独立誌だからこそ可能だった容赦のない辛口評価は、日本企業の品質向上を促す巨大な原動力となりました。
しかし、この名物企画はやがて規模を縮小し、姿を消すことになります。インターネット上では時折、「メーカーからの圧力に屈したのではないか」「編集方針が日和った」といった憶測が散見されますが、これは明確な誤解です。商品テスト終了の真の理由は、日本の産業構造とモノづくりの劇的な進化にありました。
関係資料や歴代編集長の手記を紐解くと、以下の3つの客観的要因が浮かび上がります。
花森安治が掲げた「一銭五厘の旗」の精神――権力や巨大資本に抗い、名もなき生活者の日常を守るという理念は、形骸化した実験を続けることではなく、時代に合わせて読者が本当に必要とする知恵を届けることへと引き継がれました。商品テストの終了は、敗北ではなく使命の達成による必然的な発展的解消だったのです。