北朝鮮の拷問と政治犯収容所の実態|脱北者証言が暴く戦慄の闇
北朝鮮において反体制分子の摘発を担う秘密警察組織が国家保衛省です。この組織が管轄する取調室や拘留場に一度足を踏み入れれば、憲法上の権利はおろか、一人の人間としての生命活動すら完全に否定されます。脱北者の証言から浮かび上がる拷問の手法は、肉体的苦痛のみならず、人間の精神を完全に破砕することを目的として精巧に体系化されています。
代表的な手法として広く知られているのが、通称「鳩(ピジョン)拷問」です。これは、両手を背後または鉄格子の高い位置に固定され、足が地面に辛うじて届くか届かないかの状態で、胸を前方に突き出させたまま何十時間も放置される拷問です。血流が止まり、肩の関節が脱臼寸前にまで引き伸ばされるため、数時間で胸部が激しく圧迫され、激痛のあまり失禁や呼吸困難に陥るといいます。証言者の一人は「鳩拷問を受けると、あまりの激痛に『早く銃殺してくれ』と看守に懇願する以外、何も考えられなくなる」と述懐しています。
さらに近年、デイリーNKなどの報道や司法記録で明らかになったのが、水を用いた残虐極まりない「バケツ拷問」です。被収容者の頭部にバケツを被せ、上から汚水や冷水を流し込みながら頭部を激しく殴打する、あるいは水槽に顔を沈めて窒息寸前まで追い詰める行為が横行しています。炎天下や極寒のコンクリート床の上に数日間微動だにせず正座を強要され、少しでも動けば鉄パイプで打ち据えられる「姿勢固定拷問」、さらには爪の間に竹串を突き刺す行為など、そのバリエーションは枚挙にいとまがありません。
こうした蛮行は男性だけに向けられたものではありません。韓国に逃れた脱北女性のチェ・ミンギョンさん(韓国NGO「北朝鮮監禁被害者家族会」代表)は、「私の全身の傷跡は、北朝鮮の人権状況の恐るべき現実を物語っている」と語り、拘留施設で受けた熾烈な拷問と性的暴力の被害を告発。金正恩総書記を相手取って韓国の裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしました。彼女の背中や手足に残る無数の瘢痕は、国家権力が無防備な市民に対して振るった狂気の深さを雄弁に証明しています。