人参1本が起こす静かな革命――栗原はるみ流「キャロットラペ」が2026年の台所で選ばれ続ける本質
本場のラペはディジョンマスタードや強い酸味のワインビネガーを前面に押し出すことが多い。対して栗原はるみのレシピが秀逸なのは、白米や味噌汁の並ぶ日本の夕景にすんなりと寄り添う点にある。ツンと尖らない柔らかな酸味、ほんの少しの甘み、そして上質な油分。決して主張しすぎず、主菜の肉や魚の脂をさらりと洗い流してくれる。
ドレッシングをあらかじめ乳化させてから和えるのではなく、ボウルの中の人参に順を追って調味料を絡ませていく潔さも心地よい。酸味が人参の持つ自然な甘みを引き出し、油が全体にツヤを与える。一口食べると、舌の上に広がるのは異国の味ではなく、どこか懐かしく温かい「我が家の味」そのものなのだ。