土左衛門とはなぜ水死体を指す?実在力士の語源と放送禁止の真相
辞書を引くと、土左衛門の意味は明快に「溺死体・水死体」と定義されています。怪奇小説や落語の演目にも度々登場するため、民間伝承上の怨霊や妖怪の類いと誤解されるケースも少なくありません。しかし実態は、江戸の市井の人々が生み出した痛烈なブラックユーモアを孕む俗称でした。
江戸の町は隅田川をはじめ網の目のように掘割(運河)が張り巡らされた「水の都」でした。水運が経済の動脈であった反面、酔客の転落事故、行き倒れ、あるいは入水自殺などによる水難遺体の引き揚げが日常茶飯事だった背景があります。当時の人々にとって、川面に浮かび上がった遺体は決して珍しい光景ではありませんでした。
そうした日常の死生観の中で、水気を吸って見る影もなく変貌した遺体を、恐れや忌避感だけで片付けるのではなく、あえて身近な対象に見立てて戯画化する江戸っ子特有の気質が、この言葉を生み出す土壌となったのです。