価格破壊王・中内功の栄光と挫折 ダイエー帝国崩壊の未公開真相

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中内功という怪物の内面に最も鋭く切り込んだのが、ジャーナリストの佐野眞一による傑作ノンフィクション・評伝『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』である。佐野は綿密な取材を通じて、中内の底知れぬ物欲と拡張欲の原点が、太平洋戦争末期のフィリピン・ルソン島での過酷な飢餓体験にあることを白日の下に晒した。

死線の間際で仲間が次々と命を落とす中、極限の飢えを経験した青年にとって、「モノが豊富にあること」「飢えを満たすこと」は絶対的な正義であり、生存の本能となった。戦後の闇市から這い上がり、店頭に山積みの商品を並べることに執着した中内の行動原理は、ルソン島の亡霊から逃れようとする魂の叫びでもあった。

『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』が名著として読み継がれているのは、中内の個人史を軸に据えながら、戦後日本人が豊かさと引き換えに失った精神性や社会の歪みを浮き彫りにしたからだ。高度経済成長の光と影を体現した中内の肖像は、単なるビジネスマンの枠を遥かに超え、昭和という時代の縮図そのものとして今も圧倒的な迫力を放っている。

松本 悠斗

松本 悠斗

サステナビリティ研究家

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。