メディア王・正力松太郎の正体と機密資料が暴く政界工作の裏面史
「大衆を掴むには、まず熱狂を与えよ」。正力が仕掛けた最大の文化戦略、それが読売ジャイアンツの創設とプロ野球の興行化だった。ベーブ・ルースらの大リーグ選抜を招致し、日本中をベースボールの虜にした手腕は、興行主としての天才的な嗅覚の賜物である。
しかし、この熱狂の裏側にも計算された政治的意図が潜んでいた。過酷な戦後復興や冷戦の影から国民の目をそらし、健全なスポーツエンターテインメントへと情熱を誘導する。白球を追う国民の歓声は、複雑な政治問題への関心を覆い隠す格好のクッションとなった。スポーツビジネスを国家規模の感情統制として利用したこのスキームは、大衆操作の歴史的傑作と言っていい。