スイスで尊厳死を選んだ日本人たち|渡航理由・費用と残された家族の葛藤
スイスに行けば誰でも尊厳死ができるわけではありません。現地法(スイス刑法115条:利己的な動機のない自殺幇助は不可罰)に基づき、運営団体は極めて厳格な基準を設けています。日本人が主に利用・申請する代表的な団体がディグニタス(DIGNITAS)とライフサークル(lifecircle)です。
尊厳死の審査に通るための主な前提条件は以下の通りです。
- 回復の見込みがない末期疾患、または耐え難い苦痛を伴う重度の難病であること
- 治療の選択肢が尽きているか、著しい生活の質の低下が恒久的に続いていること
- 健全な判断能力(意思決定能力)を本人が保持していること(認知症等で自己決定が困難な場合は不可)
- 他者からの強要や誘導がなく、自発的な希望であること
- 致死薬の投与バルブを自分で開ける、あるいは自力でコップを口に運べる身体的動作が残されていること
申請にあたっては、詳細な経過が記載された日本の主治医による診断書、カルテ、病歴の英訳(またはドイツ語・フランス語訳)の提出が求められます。さらに、本人の生い立ちや死を望む理由を記した自筆の手紙(エッセイ)を添えて提出します。一次審査(書類審査)を通過した後、現地スイスでの複数回にわたる独立した医師との英語や現地語による対面面談を経て、初めて「グリーンライト(執行許可)」が下りるという極めて重厚なプロセスを踏む必要があります。