昭和の緊縛画像が放つ芸術性|アングラ文化の歴史と世界的再評価の真相
日本の緊縛の歴史において昭和という時代を語る上で、避けて通れない人物が「近代緊縛の祖」と称される絵師・伊藤晴雨(いとう・せいう)です。明治から昭和初期にかけて活動した晴雨は、江戸時代の責め絵や浮世絵の伝統を継承しながら、リアリズムを追求するために生身のモデルを縄で縛り、その姿を写真やスケッチに記録して作画の原案としました。
晴雨が創出した縄の掛け方やポーズの様式美は、単なる肉体的な拘束ではなく、歌舞伎の見得(みえ)や日本舞踊の所作に通底する「緊張と緩和のコントラスト」を内包していました。この伊藤晴雨が浮世絵と緊縛を接続させた実践こそが、のちに写真という新たなメディアを得て、緊縛美の根底にある昭和の文化的背景を形成する強固な礎となったのです。
戦前の過激な風俗取り締まりをくぐり抜けたこの身体表現は、戦後の混乱期を経て、活字や写真印刷の自由化とともに一気に花開くことになります。