乞食とは?仏教の高潔な修行から軽犯罪法の違法性・ネットの真相まで解説
仏教の高潔な修行であった「こつじき」が、なぜ現代において強い侮蔑や差別のニュアンスを含む「こじき」へと変貌を遂げたのか。その契機は中世から近世にかけての社会構造の激変にあります。
中世の日本において、社寺の周辺で芸能や清掃、施しを受けながら暮らす集団が形成され、次第に身分制度の中に組み込まれていきました。江戸時代に入ると幕府の身分統制により、「非人」などの被差別階層が固定化され、その生業の一つとして「物乞い」が管理されるようになります。この歴史的経緯の中で、「乞食」という言葉は単なる行為の名称を超えて、特定の身分や出自を辱める差別語としての性格を帯びるに至りました。
「物乞い」が「困窮して他人に無償で金品を求める行為全般」を指す客観的な語句であるのに対し、「乞食」は被差別階層への侮蔑や、人格を著しく貶める意図が歴史的に蓄積されてきた言葉です。このため、一般社団法人日本民間放送連盟(民放連)やNHKなどのマスメディアでは、人権侵害を防ぎ差別の再生産を避けるため、乞食を放送自粛用語(いわゆる放送禁止用語)として厳格に扱っています。報道や公の場では、「物乞いをする人」「路上生活者」「支援や寄付を求める人」といった表現への言い換えが徹底されています。