目の中に虫が入った・見える時の応急処置と放置Ngの危険サイン
「目の中に虫が入ったわけではないのに、視界の中に蚊やハエ、黒い糸くずのようなものが浮いて見える」という訴えは、眼科外来で極めて頻繁に見られる主訴です。この目の中に虫が見える飛蚊症の多くは、眼球の大部分を占めるゼリー状の組織「硝子体」の加齢変化による生理的な現象です。硝子体が加齢や近視によって縮み、生じた濁りの影が網膜に投影されることで発生します。
しかし、警戒すべきは網膜裂孔や網膜剥離の前兆として現れる病的飛蚊症です。硝子体が網膜から剥がれる際(後部硝子体剥離)、癒着が強い部分の網膜を引っ張って破いてしまうことがあります。血管が破れると硝子体出血を起こし、視界に「大量の虫や墨汁の飛沫が広がったような影」が突如として現れます。さらに、暗い部屋で端の方にピカピカと光が走る光視症や、視野の一部にカーテンが引かれたような視野欠損を自覚した場合、数日以内に失明に至る危機的状況であるため、一刻を争う眼科受診が必要です。
また、非常に稀ではあるものの、実際に目の中で生きた虫が繁殖する東洋眼虫(とうようがんちゅう)の症状と治療についても知っておく必要があります。東洋眼虫は、山間部や農村部に生息するマダラメマトイという小型のハエが、人の涙を吸う際に幼虫を眼球表面に産み付けることで感染します。
感染すると、結膜嚢(まぶたの裏と白目の間)に体長1cm前後の細長い白い線虫が寄生し、活発に這い回ります。激しい異物感、過剰な目やに、結膜充血を引き起こし、患者自身が鏡を見た際に「白目の上を白い糸のような虫が動いている」のを発見して強いショックを受けるケースが典型的です。治療法は点眼麻酔を行った上で、眼科医が細隙灯顕微鏡を用いてピンセットで虫体を1匹ずつ物理的に摘出し、抗菌・抗炎症点眼薬で二次感染を防ぎます。