沖縄・奥武島が愛される決定的な理由|天ぷら行列と猫の島の深層
ネット上の旅行記などでは「奥武島は天ぷらを食べて猫を見て30分で立ち去る場所」という記述が散見されます。しかし、これは奥武島の真の魅力を半分以上見落としていると言わざるを得ません。
民俗学や郷土史の視点で見ると、奥武島は沖縄の信仰と伝統文化が色濃く残る神聖な島です。琉球王国の時代、この周辺の海域や小さな離島は死者を舟で送り出して弔う「葬送の地」としての神話的背景を持っていたと云われています。島内には竜宮神を祀る拝所(ウガンジュ)が複数点在し、現在でも旧正月には漁港に鮮やかな大漁旗がはためき、豊漁と航海安全を祈願する祭祀が厳粛に執り行われます。
また、旧暦5月4日(ユッカヌヒー)に開催される「奥武島海神祭(ハーリー)」は、本島南部を代表する熱気あふれる伝統行事です。特に呼び物となっているのが、橋の上からハーリー船めがけて屈強な漕ぎ手たちが一斉に飛び込む奥武島 ハーリー 飛び込み(本バーリー前の仕掛け)。海への感謝と若者たちの勇壮な姿を一目見ようと、県内外から数千人の観客が詰めかけます。
さらに春先(2月〜4月頃)には、潮が引いた海岸線が一面鮮やかな緑色に染まる「アーサ摘み」の季節を迎えます。採取されたばかりの生アーサは汁物や天ぷらに使われ、島全体が磯の瑞々しい香りに包まれます。「天ぷらを食べるだけの通過点」にしてしまうのは、この島が持つ重層的な文化に対してあまりにも惜しい選択です。