大相撲の櫓太鼓!千秋楽に打たない理由と種類・伝統の真相を徹底解剖
相撲会場の外で威容を誇る「太鼓櫓」は、建築構造としても極めて特異な木造建築です。幕末の記録によると、櫓の高さは5丈3尺(約16メートル)、根元の四辺は各8尺(約2.4メートル)、最上部で太鼓を据える櫓上は6尺(約1.82メートル)四方と規定されています。現代でもほぼこの規格を踏襲し、本場所の設営時にはわずか2日間で丸太と麻縄だけを使って職人の手で組み上げられます。
櫓の頂上には2本の長い竹竿が青空に向かって突き出され、その先端には麻の御幣(ごへい)が吊るされます。これは櫓が単なる見張り台や放送設備ではなく、神仏を招き、天下の安寧を願う神聖な祭壇であることを示しています。
そして驚くべきは、この地上16メートルの櫓へ登る「呼出」たちの驚異的な身体能力です。櫓にはエレベーターはもちろん、安全な階段や命綱、落下防止ネットすら備え付けられていません。呼出は、組まれた丸太の横木に手足をかけ、梯子を登るように垂直の柱を身一つでよじ登っていきます。
最上部に到達した呼出は、幅わずか1.8メートルほどの吹きさらしの板の上に座り、風雨や寒気、夏の猛暑に晒されながら撥を振るいます。強風の日は櫓自体がギシギシと揺れ動く中、足場の狭い高所で平常心を保ち、一切の狂いなくリズムを刻まねばなりません。
相撲界において、呼出の主な役割といえば土俵上での力士の呼び上げ、土俵築き、懸賞旗持ちなどが知られていますが、実は「太鼓を正確に打てること」こそが一人前の呼出として認められる最高峰の技術的試金石とされています。高所への恐怖を克服し、体幹とリズム感を研ぎ澄ました者だけが、青空の特等席でバチを握る栄誉を授かるのです。