なぜ火葬場から煙突が消えた?無煙化技術と名建築が変えた別れの風景
現在、国内で稼働する火葬炉のほとんどは、煙突を必要としない「無煙無臭化システム」を標準装備している。煙突の本来の役割は、燃焼によって発生したガスや煤煙をドラフト効果(上昇気流)によって上空高くへと逃がすことだった。しかし、最新鋭の火葬設備において、煙は上空へ逃がすものではなく「炉の内部で完全に焼き尽くし、清浄化するもの」へと根本的な発想の転換がなされた。
主燃焼炉の奥には、850度から1000度以上の超高温を維持する「再燃焼炉(二次燃焼室)」が組み込まれている。ここで未燃焼のガスや微粒子、臭気の分子に至るまで徹底的に再加熱され、分子レベルで分解される。その後、排出ガスは瞬間的に冷却装置を通り、高度なバグフィルターや集塵機によって有害物質をミリグラム単位で捕捉される仕組みだ。
公益事業の規格策定を支える一般社団法人火葬研や日本環境斎苑協会などの専門知見によれば、最終的に大気中へ放出される気体は、一般的なビルの空調排気と変わらないレベルまで浄化されているという。排気口自体も屋上のパラペット(胸壁)の裏側やルーバーの陰、地下ピットなどに巧みに隠蔽されており、外観からは排気設備が存在することすら覚らせない。