山形冷やしラーメンなぜ氷が浮く?発祥の真相と名店比較【2026】
丼のなかに透明な角氷が浮かび、キンと冷やされた黄金色のスープ。この唯一無二のスタイルが誕生したのは、昭和27年(1952年)の夏のことでした。舞台となったのは、山形市本町に店を構える老舗蕎麦店「栄屋本店」です。
当時の店主であった故・阿部専四郎氏のもとに、足繁く通う常連客から投げかけられた「蕎麦には冷たい『冷やし麦』や『ざる蕎麦』があるのに、なぜラーメンには冷たいものがないんだ。冷たいラーメンが食ってみたい」という何気ない一言がすべての引き金となりました。しかし、その実現への道のりは困難を極めたと、当時の開発記録や店側の証言は伝えています。
温かいラーメンを単純に冷水や冷蔵庫で冷やすと、豚骨や鶏ガラ、ラードなどの動物性油脂が約30〜40℃の融点を下回った瞬間に白く固まり、口当たりは著しく悪化し、強烈な獣臭さを放ちます。阿部氏は約1年間にわたり試行錯誤を重ね、スープの仕込み段階で徹底的に動物性脂をすくい取り、冷やしても液状を保つ植物性油脂(ごま油やサラダ油をベースにした特製香味油)でコクを補う手法を編み出しました。
さらに、栄屋本店が誇るもう一つの特徴が「氷入り牛骨スープ」の採用です。山形県内陸部では古くから蕎麦屋でも牛骨で出汁を取る食文化が根付いており、牛骨の澄んだ甘味と鰹節や昆布の和風出汁を合わせることで、冷たくても豊かな旨味の広がりを実現しました。氷が浮いているのは単なる演出ではなく、厳しい猛暑下でも最後の一滴までスープの温度を1〜3℃の至適温度にキープするためであり、氷が溶ける計算を見越して元ダレの濃度がミリ単位で緻密に調整されています。