北新地放火殺人事件の真相と現在|26名犠牲の背景と防犯の教訓
多くの人々が抱いた「一体なぜ、何の関係もないクリニックや患者たちが標的にされたのか」という疑問に対し、大阪府警による徹底した捜査がその凄惨な背景を浮き彫りにしました。現住建造物等放火と殺人の疑いが持たれたのは、大阪市西淀川区に住んでいた無職の谷本盛雄容疑者(当時61歳)です。自身も現場で重度の一酸化炭素中毒を負い、意識不明のまま事件から13日後の12月30日に死亡したため、刑事責任を直接問う法廷は開かれませんでしたが、押収品や足取りから犯行に至る暗い軌跡が判明しました。
谷本容疑者の経歴を辿ると、かつては腕の良い板金工として働き、家庭を築いていた時期もありました。しかし、2008年頃に離婚したことを契機に生活が荒廃し、2011年には元妻の自宅で長男の頭部を包丁で刺して重傷を負わせる殺人未遂事件を起こし、懲役4年の実刑判決を受けて服役しています。出所後は家族との親族間交流も完全に途絶え、貯金を切り崩しながら西淀川区の持ち家で社会から完全に孤立した生活を送っていました。
残されたメモや自宅の家宅捜索からは、容疑者が2019年の京都アニメーション放火殺人事件に関する新聞記事を収集・保管していた事実が確認されています。事件の約3週間前には近隣のガソリンスタンドで正当な理由を偽ってガソリン約10リットルを購入し、事前に自宅で少量の火を放つ予行演習を行っていた形跡すらありました。クリニックへ通院歴があったものの、特定の医師やスタッフに対する個別具体的な恨みというよりは、自らの行き詰まった人生への絶望と社会に対する憎悪が混ざり合い、未来を取り戻そうと前向きに治療やリワークに励む人々を道連れにした「拡大自殺」であったと結論づけられています。