ペットボトルで一瞬で真っ白!雲の作り方と失敗しない実験の科学

ペットボトルで一瞬で真っ白!雲の作り方と失敗しない実験の科学の概要と注目ポイントをわかりやすく整理しました。

手元のペットボトルの中でなぜ雲が発生し、なぜ煙が必要なのかという疑問には、地球の大気物理学の根本原理が詰まっています。この現象を読み解くキーワードが「断熱膨張(だんねつぼうちょう)」と「凝結核(ぎょうけつかく)」です。

空気が外部と熱のやり取りを行わないまま急激に体積を広げる現象を断熱膨張と呼びます。気体は外側へ押し広がる際に周囲へ仕事を消費するため、自分自身の内部エネルギーを失い、結果として温度が急激に低下します。ペットボトル内の圧縮された空気がフタの開放とともに一気に外へ吹き出す際、ボトル内の空気は激しい断熱冷却を起こし、内部温度が瞬時に数度から十数度近く下降します。

温度が下がると、空気が保持できる気体状態の水分量を示す「飽和水蒸気量」の上限が一気に落ち込みます。行き場を失って過飽和状態になった気体の水蒸気は、気体から液体の微粒子へと姿を変えようとします。これがまさに雲の正体である「無小数の水滴」です。

ここで決定打となるのが「なぜ煙を入れるのか」という疑問の答えです。純粋に清潔な空気の中では、水蒸気分子同士が自発的に結合して水滴になるためのエネルギー障壁が高く、湿度100%を超えてもなかなか液体化できません。そこに線香の煙に含まれる微細な煤(すす)や灰の粒子が存在すると、それが「足場(核)」となって水蒸気が一気に群がり、液滴へと成長します。気象学においてこの媒介物を凝結核と呼びます。

空に浮かぶ本物の雲も、地表から温められて上昇した空気が上空の低気圧環境で断熱膨張を起こし、大気中のチリや海の塩分粒子(海塩粒子)を凝結核として水滴化することで誕生しています。ペットボトル実験は、上空数千メートルで起きているダイナミックな気象現象を、卓上で完全にトレースしているのです。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。