ジョン万次郎とは?漂流から開国を動かした激動の生涯と功績の真実
ジョン万次郎が幕末史に残した足跡のなかでも、際立っているのが「生きた英語力」と「維新の志士たちへの思想的覚醒」です。
「耳から入る英語」を確立した『英米対話捷径』
当時の蘭学者たちがアルファベットをカタカナ読みで発音していたのに対し、万次郎は現地でネイティブの発音を直接耳で聴いて体得していました。彼が著した日本初の本格的英会話教本『英米対話捷径(えいべいたいわしょうけい)』には、驚くべき表記が並んでいます。
- Water = 「ワラ」(従来のカタカナ読み:ウォーター)
- Night = 「ナイ」(従来のカタカナ読み:ナイト)
- Cool = 「クー」
- What time is it now? = 「ワッタイミジットナウ」
現代のフォニックス教授法や音声学に極めて近い実践的なアプローチであり、この合理的な発音表記は、日本の外国語教育における先駆的偉業として言語学者からも高く再評価されています。
坂本龍馬へ受け継がれた「海援隊構想」の種火
帰国後、土佐藩で厳重な取り調べを行った絵師・知識人の河田小龍(かわだしょうりゅう)は、万次郎から聞き取ったアメリカの民主主義、大統領制、産業、鉄道、そして近代的な捕鯨・海運ビジネスの仕組みを『漂巽紀略(ひょうそんきりゃく)』という書物にまとめました。
この小龍の元へ足繁く通い、万次郎の語った世界観に衝撃を受けた若者が坂本龍馬でした。「船を手に入れて世界と貿易を行い、日本を豊かにする」という龍馬の海援隊や亀山社中の構想は、まさに万次郎がもたらしたアメリカの実情そのものが原点となっていたのです。