熊に襲われた遺体の痕跡と現場の真実|法医学と習性から迫る防衛策
過去の人身事故データを検証すると、被害者の約7割から8割において顔面や頭部に深刻な損傷が見られます。これには、日本に生息する2種類のクマそれぞれの行動心理が関係しています。
本州以南に生息するツキノワグマの人身被害は、大半が「突発的な遭遇による防御的攻撃」です。ヤブやカーブの先で突然人間と出くわしたツキノワグマは、パニックと恐怖から瞬時に前足を振り下ろします。このとき、立ち上がったクマの手の高さがちょうど成人男性の顔面から胸部の高さに位置するため、顔面の皮膚や骨、眼球、鼻梁が破壊されるケースが多発します。
一方、北海道に生息するヒグマは体格が成獣オスで200kg〜400kgに達し、ツキノワグマとは比較にならない破壊力を持ちます。防御的な一撃であっても頭蓋骨を一撃で粉砕する威力があるほか、人間を明確な獲物(食害対象)とみなして攻撃を開始した場合は、全身にわたる組織の欠損を引き起こします。