芥川賞作家・奥泉光の文学的迷宮を解く!知られざる創作の核心
奥泉作品の真骨頂は、異なるジャンルを衝突させるハイブリッドな構成力にある。その頂点のひとつが、2010年に世に出た『シューマンの指』だろう。クラシック音楽の優美な響きと、密室や不可解な死を巡るミステリー小説の骨格が、狂気とエロティシズムを孕みながらポリフォニックに絡み合う。
音楽の構造をそのままプロットの推進力へと転換する技巧は、彼自身がフルート演奏に精通しているからこそ成し得た離れ業だ。真犯人探しというパズラーの快感を提示しながら、読者が信じる「現実」そのものを解体していくメタミステリーの手法。純文学の批評性と娯楽小説の牽引力が見事に同居している。