フジテレビの帝王・日枝久の現在|取締役退任理由と隠された権力構造
絶対的権力を誇り、40年近くにわたりグループ経営の中枢に居座り続けた日枝久氏が、なぜ2017年に取締役会長退任を余儀なくされたのか。その退任の決定的な理由には、複合的な要因が絡み合っています。
最大の要因は、視聴率の劇的な転落と長期低迷でした。2000年代半ばまで三冠王を争っていたフジテレビは、2011年の「韓流偏向報道騒動」を機に視聴者の信頼を損ね、大規模なデモ抗議に発展。その後、若年層のテレビ離れやYouTube・Netflixなどの台頭に対して有効な手を打てず、ゴールデン帯・プライム帯の視聴率は日本テレビ、テレビ朝日、TBSの後塵を拝する「4位集団」へ沈没しました。
第二の要因が、社内ガバナンスの形骸化と「日枝派閥」の硬直です。日枝氏の寵愛を受けた幹部のみが出世する人事構造が定着し、現場のクリエイターが上層部の顔色を窺って萎縮。かつて強みだった「果敢な冒険精神」が失われ、過去の成功体験に固執したマンネリ番組が量産されました。退任直前の株主総会では、株主から「視聴率低迷の責任は経営トップにある」「日枝会長の長期独裁が元凶だ」という厳しい追及が相次ぎました。
第三に、海外機関投資家を中心とするコーポレートガバナンス・コードの強化です。上場企業において高齢の相談役・顧問が実権を握り続ける構造は、資本市場から激しい批判を浴びるようになりました。業績悪化と株価低迷に業を煮やしたステークホルダーからの圧力を受け、日枝氏は宮内正喜氏(当時BSフジ社長)への社長交代を呑む形で、自らも取締役会長の座を退かざるを得ない状況へと追い込まれました。